北海道・千歳川のブラウントラウト 回想

sige

2007年06月09日 21:55

 本州でも一部の河川に生息しているブラントラウト。北海道では外来魚として駆除の対象となっている。私はブラックバスフィッシングの経験はないが、特定外来生物問題については色々と考えさせられる。ブラウントラウトは関東近県では本栖湖や芦ノ湖、そして中禅寺湖など湖や一部の河川(犀川など)に生息している。このブラウントラウト、イワナと同じように、固体によってだいぶ模様のばらつきがある。            


 北海道、千歳川のブラウントラウト。道内の仲間の話では、千歳川ブラウンはとにかく赤い点が美しいと聞いていた。しかも自然繁殖しているワイルドトラウトである。普段道東をメインに釣行している私だが、この話が10年前からずっと脳裏に焼きついていた・・。私がこれまで出会ったトラウトので、もっとも魚体の美しさに感動したのは、知床のオショロコマである。サイズはとても小さいがそのあまりにも美しさに、時間を忘れて見入ってしまったのを今でも鮮明に思い出す。まるで、宝石箱のようだった。
 千歳川のブラウントラウト。いったいどのような美しさなのだろうか・・  
 
                
知床のオショロコマ。写真では分かりづらいが、実際はもっと綺麗だ。固体の減少が危惧される。


 2年前の7月中旬、2日間の日程をとり、千歳川に向かった。思いつきの突然の釣行。あまり日程がとれなく、釣りが出来るのは1日半のみ。到着した日はすでに夕方だったので、竿は出さずに川の下見に向かった。今回の釣行は時間の関係上、青葉公園付近から上流の烏柵舞橋までの区間をじっくり攻めてみるつもりだった。上流はあまり変化のない北海道らしい渓相で下流に向かうにつれ、ポイントが分かりやすくなるといった感じだった。
 
 さらに情報収集の為、千歳市内にあるプロショップにお邪魔する。親切な店員さんで東京から来たことを告げると、色々とメゾットやポイントをレクチャーしていただいた。夏はベイトがテレストリアル系のことが多いので、瀬の中よりは対岸のオーバーハングした木の下にピンスポットでミノーを打ち込み、表層をナチュラルにドリフトしていくとバク!と出るとのこと。木から落ちる虫をイメージして釣っていく。お勧めのルアーはショップオリジナルのDコンタクト50mm・アワビ貼りとのこと。数個購入し、千歳市内の少し怪しい激安ビジネスホテルにチェックインした。翌朝すぐ釣りが開始できる様支度をして、市内で某有名ラーメン店で食事を済ませてから、そそくさと床に就いた。翌朝4時にホテルを出発する。

                
                         青葉公園付近の渓相。



 前日目を付けておいたポイントに着くと、なんとすでに車が停まっている!ボンネットの感じから、着いてまだ間もないようだった。その後何箇所か目ぼしいポイントの車止め場所を回ってみるが、土曜日ということもあって、ほとんどの場所に車が停まっていた・・・・。まるで多摩川や日原川と変わらない状況に愕然とする。


 とりあえず作戦を練る為にコンビニでコーヒーを買い、悩んでいるとなんと雨がぱらついてきた!私は遠征先での雨は土砂降りでないかぎり、大歓迎なのである。まず地元の人はいつでも釣りができるので、雨が降ってくると一気に激減する。しかも魚の活性はあがる。30分後先ほどのポイントに行ってみると、案の定すでに車はなかった。さっそく入渓し釣り上がって行く。
 とにかくロスト覚悟で竿抜けしていそうな対岸の木の下にサイドでDコンを直撃し、ロッドを縦気味にし下流にドリフトしていく。いくつのポイントを打っただろうか・・。なかなか魚を出すことが出来ない・・・。雨の中、タバコに火をつけて、少し腰を下ろした。
 しかし街からすぐ近くの川とは思えない、美しい渓相と景観である。雨がしとしとと降りつづく中、大きく深呼吸をした。

                
       水面から木との間はかなり狭い。が、迷わず打つ。でないと、なかなか出ない。



 再びキャストと始めると、その時は突然やって来た。対岸にキャストし、下流に流し始めた瞬間水面が大きく割れ、なんと推定60センチ以上はあるだろうブラウンが、体全身を水面から出し、ジャンプしバイトしてきたのだ!表層のルアーを食いそびれた!その恐ろしくデカイ魚体をはっきりと確認することが出来たのであった・・・。その後同じポイントを数回流してみるが、残念ながら反応はなかった。あの瞬間を今でもたまに思い出すことがある。でもヒットしても私では捕れなかったと思うが・・・・。そう思うようにしている。



 車で移動し今度は烏柵舞橋から釣り下がっていく。同じようにロスト覚悟できわどいポイントを打っていく。対岸の木の少し上流側にキャストし、すぐ下流に出ている木の下を通すと、やっと本命のブラウンが出てくれた。その後、同じように木の下でヒットしてくる。確かに魚は水面を意識して、落ちてくる虫を意識している様な出かただった。

 千歳川のブラウントラウト。その魚は噂どおりの美しさだった。それは僕たち釣り人にとっては、どんなに高価な宝石よりも美しい。妻には理解不能であろう。価値観の違いである。この美しい魚と出会う為に、そして記憶という財産を得る為に時間とお金をかけ、やってきたのである。たかが27㎝程度の魚・・。でも私の記憶にしっかりと焼きついた思い出の魚である。水中でしっかりと蘇生し、リリースする。その後も同じようなポイントで数匹のブラウンと2匹のヤマメを出し、十分満足して竿をたたんだ。

                 
             着水と同時にヒットしてきた千歳川ブラウン。美しい魚体だ。

                
                この魚もとても赤い点がはっきりしていて綺麗だった。

                
                         下流で出たヤマメ。


 千歳川は千歳空港からも近く、札幌からもそう遠くはない。都会から離れていない場所に手付かずの様な、美しい自然の川が悠然と流れているのである。はっきりいって魚は相当スレ気味だ。関東の河川と変わらないかもしれないが、魚はたくさんいる。あの自然と綺麗な魚と出会えるのであれば、遠くからでも足を運ぶ価値は十分にあると思う。




 あの時に活躍した、ショップオリジナル・アワビ貼りDコンタクト。あれから使わずに、大切にミノーボックスの中にそっとしまってある。いつかまたあの川に立つその時の為に・・。

                


●ロッド:UFMウエダ・TSS-72Ti・TSS-57Ti
●リール:03ツインパワーMgC3000・02ツインパワー2000
●ライン:VARIVAS スーパートラウトアドバンス  8ポンド・5ポンド
●ルアー:Dコンタクト50mm・シルバークリークシャッド50mm・チヌークS7g・パンサー7g他


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